◆店に入ると、可愛い娘さんが元気な声で迎えてくれる。とても明るくて楽しい雰囲気のお店だ。
ランプや造花などの調度品は、ユニークでクラシックなデザイン・色彩で統一されている。お手洗いに入ってびっくりした。料亭なみのお手洗いなのである。かゆいところまで行き届いているのには感心した。
料理の基本である細うどんとそばは、歯切れがよく汁も美味しい。ご飯ものは、独特の風味のある各種茶碗と、大きくて旨いおにぎりである。
注文した「鉄なべそば」は格別美味しく、汁も全部飲み干してしまった。
ちなみに値段は格安で、うどん・そばが350円〜550円、各種茶碗が250円〜350円、おにぎりが110円、りゅう定食(うどんまたはそばと茶碗のセット)が570円だ。
ご主人の柴崎清さんが、メニューや調度品について説明する。
「開店したのは昨年11月3日ですが、数年前から、評判の店があれば家内といっしよに食べにいきました。また、デパートなどに良い調度品が出ていると、すぐに見にいきました。ですから調度品もメニユーも、一品一品それぞれ思い入れがあります」
続いて細うどんの由来について聞いた。
「呉の町の細うどんは、海の粋な人が陸にあがったとき、限られた短い時間で美味しく食べられるように考案されたもので、昔から有名です」とご主人。
当店の細うどんとスーパーの細うどんはどこが違うのかと尋ねたら、奥さんのまゆみさんが答えた。
「スーパーの細うどんは保存料が入っていますが、当店の細うどんは添加物が一切入っていません。毎朝、4時から8時くらいの間に作って、その日に出すんです。麺の味には格別こだわりを持っています」
添加物が入っていないこともさることながら、朝4時に起きて、麺をつくるというのには驚いた。
営業時間が22時までなので、2人の睡眠時間は4時間くらいだ。思わず奥さんを見ると、42歳というのに肌がとてもきれいで、30代の真ん中くらいにしか見えない。毎日、生きがいを持って仕事をしているので、身体が持つのだろうと思った。
夜の部になると、焼酎・酒・生ビールにおつまみが加わる。焼酎は種類が多く、8種類もの一升瓶が陳列されていた。値段は、いずれも格安で、おおむね1杯400円である。
「夜は、この空間でゆっくり落ち着いて食べてもらいたいと、音楽もレグエやボサノバをかけています」とご主人が説明する。
◆「りゅう」を開店するまでのお2人のことを聞くと、呉市の繁華街中通を中心に、[山乃家」という3軒の飲食店を経営していたとのことだった。
さっそく「山乃家」をのぞいてみると、門構えが独特で老舗という感じのお店で、食事も美味しかった。
ご主人がこれまでのルーツを説明する。
「山乃家は創業してから60年の店で、家内のおじいさんが開業し、お父さんが伸ばしたんです。私と家内とは高校が同クラスで、それが縁で結婚しました。結婚してから12年ばかりたったとき、お父さんが急死したんです。亡くなる直前に、店のことを頼むと何度も言われたので、就職していた建築会社を辞め、この仕事に飛び込みました。あれから、はや13年になります」
老舗を継いだ2人だったが、中通界隈の構造的衰退もあって、それからの道のりは必ずしも安易ではなかった。
「不景気に立ち向かうため、いろいろ工夫しました。今は止めましたが深夜営業をしたり、呉名物の細うどんをPRし定着させたりしました。私たちは、結局、食文化を通じて呉市を盛り上げるしか道はないんですものね」とご主人が言うと、奥さんが「主人は研究熱心なんです」と補足した。
「食事は創作だと思っています。時代に合った新しいものを創っていくためには、マンネリに陥らないことだと、常々自分を戒めています」とご主人が締めた。
◆「りゅう」にかける2人の決意と抱負は、例えば、年中無休、夜10時まで営業ということからみてもも、なみなみならぬものがある。
「山乃家の3軒は父から譲ってもらったものですが、この店は私たち2人で創りました。ですから、思い入れがとっても大きいんです」と奥さんが言うと、続いてご主人が補強した。
「山乃家があるのに、どうして新しい苦労を背負い込むのかとも言われました。しかし、こうして命がけでがんばるのが好きなんです。お客さんに美味しかったといわれると、すごく嬉しいですね」
2人は、ほんとうに仲が良く呼吸が合っている。相手の良いところを聞いたら、
「主人の粘り強く責任感のあるところが好きです」と奥さん。
「家内のいいところは、楽天的なことです。それに人を和ませる雰囲気がいいですね」とご主人。
これらの言葉を聞いて、「りゅう」は間違いなく成功するだろうと思った。
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