好きだから落語を演じるという
六ッ家千艘さん
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大企業の研究職を務めながら、広島演芸協会・はこざき落語会に所属し、落語を演じている六ッ家千艘さん。
落語が好きだからと毎日毎日、いつも落語のことを考え続けているという六ッ家千艘さんにインタビューした。
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◆待ち合わせ場所に指定した松村呉服店(広島市佐伯区五日市)に入ると、女性と二人連れの、すらりとした長身の若い男性に声をかけられた。
「戸村さんですか。りくつやせんそうです」
明るい張りのある声である。「六ッ家千艘」という高座名から、いかつい芸人をイメージしていたので意表をつかれた。
同伴の女性は奥さんだった。彼女も落語家で、高座名は「はたご家零央(はたごやれお)」という。
ご夫妻は2人とも会社勤めをしながらの落語家で、いわゆる二足草鞋だ。千艘さんの務めている会社が大竹市、奥さんの務めている会社が広島市にあるため、住まいは中間点の廿日市市に決めたという、ほやほやの新婚夫婦である。
落語については不案内なため緊張したこともあって、主人と奥さんの落語の芸はどちらが上かと愚問を発した。
「始めたのは同じ頃ですが、なにしろキャリアが違うので、今ではとてもかないません」と零央さんが答える。
千艘さんが説明を加えた。
「10年前、大学の落語研究会で知り合い、去年の10月結婚しました。口演した後は、お互いに批評しあいます。彼女の深い意見には、いつもありがたく思っています」
お2人の高座名のいわれを聞く。
「六ッ家(りくつや)は理屈っぽい性格をもじったものです。千艘は音の鋭さと語呂の良さでつけました」
そういえば、彼のホームページ(上記)はちょっと理屈っぽい感じ。なるほどと合点した。
奥さんの「はたご家」は実家が旅館を営んでいることからつけたもので、「零央」とは獅子座の生まれだから「れお」だそうだ。
千艘さんは、某社で研究開発の仕事をしている。そのため、口演は土曜日と日曜日に限られるというのに、昨年の口演回数はなんと48回、週平均1回である。毎日落語のことを考え続けているという打ち込み方が理解できた。
彼の本名は堤晋一郎。お父さんが落語が好きだったので、その影響を受け、小学校2年生のときには落語を何席か覚えて話していたという。
もっとも、落語を本格的に始めたのは、九州大学落語研究会に入ってからとのこと。
「大学を卒業して就職、広島へ来たのが、3年前の27歳のときです。すぐに広島演芸協会に入会しました。結婚したのは2003年の10月です。家内も広島演芸協会の会員です」
2003年は彼にとって当たり年か、全日本社会人落語選手権大会(東京)に出場し新人賞も受賞している。
◆「江戸落語に属し、好きなネタは勘定板・千両みかん・紙入れなど。好きな落語家は立川談志です」という説明があったので、少し落語について解説してもらった。
「演じている言葉の種類で分けると、東京で江戸弁で演じているものが江戸落語、大阪で上方弁で演じているものが上方落語です。
また、成立した時代で分けると古典落語と新作落語があります。大まかに分けて、江戸時代から明治時代初期までに作られたものが古典落語、明治時代中期以降に作られたものが新作落語と呼ばれています。
古典落語のネタは、何百年も積み上げられ完成しています。名のあるものは200〜500ともいわれますが、私がよく演じているものは20くらいです。新作落語は、現在でもネタがどんどん作られているので数の把握はできません。私も何席か作っていますが、人前で演じたことがあるものは5席です」
同じネタを何度も聞いているとあきないかと尋ねると、
「演じる人が違うと、ネタは同じでもまったく違って聞こえます。
例えば、桂枝雀師匠の説を引用すると、
『落語には知的な笑いと情的な笑いがある。知的な笑いは理屈で納得できる笑いで、一度聞いたら二度目の面白さが減ってしまう。これに対して情的な笑いは、赤ん坊の笑い顔のように、何度見ても聞いても飽きが来ない笑いである。落語にこの情的な笑いが含まれている限り、飽きることはない』
私はこの説の通りだと思っています」
さすがデジタル派だけあって、わかりやすい説明である。まるっきり落語を知らない私にも、なんとなく理解できた。
◆千艘さんは述懐する。
「結局、落語が好きなんです。そして落語を見に来た人にも落語を好きになってもらいたいんです。
でも、それだけに怖い時もあります。自分の落語で笑ってもらえなくて『落語って面白くない』と思われたらどうしようかと、いつも思っています」
「先般、お客さんが2人だけということがありました。つらかったですね。
落語は、ある程度の数のお客さんがいた方が演じやすいし、お客さんも笑いやすいんです。
誰かが笑うと、その笑いが周囲に広がるので、いつも笑っているお客さんを見て、そこから笑いが広がっていくように意識しながら話しています」
口演するとき、どんなことに心がけているか聞いた。
「お客さんには、いつも楽しんでいただきたい、気分のよさを味わっていたたきたい。いつも、このように思って演じています。
落語はいくら自分1人で稽古していても上手くはなりません。落語家はお客さんの前でこそ成長するんです。ですから、お客さんに楽しんでいただいて、自分がもっと上手くなっていく、というのが理想ですね」
これからの抱負を聞くと、
「広島ではまだ独演会をやったことがありません。お客さんを1人づつ着実に増やして、いつの日か独演会をしたいと思っています」と、爽やかな笑顔が返ってきた。
◆六ッ家千艘さんの主な寄席
話芸に親しむ夕べ 話・和・輪・ワー(広島)
落語と篠笛の集い(広島)
はこらく寄席(福岡)
もん・千艘二人会(神奈川)
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