戸川幸一郎さんの作品
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◆戸川幸一郎さんは26歳。熊野町に家一軒借りて、アトリエ兼住居にしている。独身というのに、結構、掃除が行き届いていた。
アトリエはガレージ。試作中の作品や完成品、絵の具などが雑然と置かれていた。
戸川さんは、2001年、長野県「イルフ日本童画大賞」審査員特別賞を受賞した新進童画作家。個展を開いたり、講師活動をしたりするなど、精力的に活動を展開している。
彼の絵は、色彩もタッチもソフトでたいへん優しく、親しみが持てた。
「これは本です。手作りなんですよ」と言いながら、『気になる子』と書いてある木の箱を開いた。
「この本は、限定5冊出版です。1冊の単価は63000円もしたんですよ」という説明にびっくり。
固い厚めの紙1枚づつに絵と文が書かれ、しかも、1枚ごとにセロフアンが挿入されるという、手の込んだ作りになっている。
絵もよかったが、温かい雰囲気のある文には目を惹かれた。
てくてく
てくてく
てくてくと
いつも歩く散歩道
いつものはずのこの道に
見たこともない女の子
彼の好きな言葉は「音とリズム」。その意味が理解できるような文だった。
◆高校のとき、戸川さんの志望は調理師だった。
両親はあまり賛成でなく、調理師になるのもいいけど大学だけは出てくれと説得した。このような経緯で入った大学で、絵を描く楽しみを知った。
しばらくして、本格的に絵に取り組もうと決意、大学を中退した。それから絵の専門の公立大学に入るため一生懸命に勉強したが、入試の壁は厚く失敗した。
私立大学への入学は授業料が高く経済的にムリなので大学は断念、専門学校に入学した。
こんな挫折体験があるのに、彼には、まったくいじけたところがなく、明るくて人懐っこい。
生まれながらの性格もさることながら、よほど生き方もいいのだろうと思った。
彼は生来の天分のうえに、こんな積極的な生き方もあってか、絵の力も着実に伸び、つぎつぎ賞をもらったり、個展を開いたりしている。
こんな戸川さんだが、経済的には悩みがつきないようだ。
「絵で身を立てていく決心をしていますが、経済的にはたいへんですね。材料費がすごくかかるし、画集など資料集めのコストもバカになりません」
「個展を開いても、買ってくれるのは知り合いばかり。先般、1カ月ばかり、まったく収入がなかったときには、さすがに落ち込みましたね」
そんなときには、両親に助けを求めるのかと聞いたら、意外な返事が返ってきた。
「両親は健在なので、食費くらいはなんとかしてくれるかも知れません。しかし、それをやるとおしまいです。精神的に堕落して、独立心がなくなってしまいます」
今時の青年にも、こんな人間がいるのかと感心した。
彼は、もちろん絵も好きだが、それにも負けず児童文学が好きなようだ。
「将来、絵本作家になりたいですね。貧乏は恐れません。好きな道にベストを尽くし、しっかりと生きていくつもりです」
このように話す彼の笑顔は、実に爽やかだった。
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戸川幸一郎さんの略歴 |
| 1976年 |
広島県呉市に生まれ |
| 1995年 |
呉市の後藤美術研究所にて絵を始める。 |
| 1997年 |
渡仏 製作活動をする。翌年帰国。 |
| 1999年 |
広島芸術専門学校に入学、銅版画専攻。 |
| 2000年 |
広島県美術大賞入選。 |
| 2001年 |
福井県FUKUI サムホール大賞入選。
青森県「あおもり版画トリエンナーレ大賞」入選。
長野県「イルフ日本童画大賞」 審査員特別賞受賞。
第1回個展「ニィタタ」−大人から子供へ−(3月)
第2回個展「童画」展 −大人から子供へ−(11月) |
| 2002年 |
広島芸術専門学校卒業
第3回個展「気になる子」絵本展(8月)
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| 2003年 |
第4回個展「住人の一コマ」作品展(3月) |
| 現在 |
広島芸術専門学校講師
熊野筆の里工房
アクリル画教室講師 |
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