自分にしか書けない音楽を創りたい 寺内大輔さん |
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A ぼくは、ジャンルには興味がないんです。あえて分けると、芸術音楽と商業音楽になるのでしょうか。ぼくが取り組んでいる音楽は、芸術音楽の伝統の中に入ると思います。CD屋さんでは「現代音楽」というコーナーに属しているようです。 Q 現代音楽は難しそうですね。 A 確かに、現代音楽に馴染みの薄い人には、難しく感じられるかも知れません。しかし、たいへん様々な楽しみ方ができる音楽だと思いますよ。 Q ポピュラーだとわかりやすいけど、現代音楽は、何が伝えられているのかよくわからないですね。 A 作曲家によっては、心とか感情あるいは風景の美しさ、平和へのメッセージなどを伝えなければいけないという人もいます。そんな考え方も面白いと思いますが、ぼくの音楽にはテーマはありません。 テーマがないというと、不思議に思われることがあります。そんなとき、料理人のことを考えてもらっています。料理は、味以外のものはほとんど表現しないけど、味そのものが食べる人を納得させます。 ぼくの音楽も、音楽以外のものは表現していないけど、音楽そのものの魅力で聴く人に納得してもらいたい、こんな方向を目指しています。 しかし、作り手がいくら何かを表現しようとしても、あるいは、ぼくみたいに音楽以外のものは表現しないといっても、聴き手にはいろいろな聴き方があります。要は、聴きたいように聴いてもらえばよいと思っています。 ぼくの狙いは、音楽によって、魅力ある空間を創り出すことです。 <寺内さんから、3枚のCDを貰った。 ・寺内大輔作品集1/糸・記憶・粘着など数曲編集/¥2800 ・言葉を用いない詩・声小品集/詩のボクシング ・呉青山中学・高校校歌 寺内大輔作品集1は決まったメロディがないのに、いつのまにか、やさしい音に誘い込まれていくような作品で、ぼくなりに理解できた。声小品集はすごく個性的、こんな音楽もあるのかとびっくりした。校歌は明るくて軽快。寺内さんはこんな曲も作るのかと、レパトリーの広さを感じた> Q 「詩のボクシング」とは何でしょうか。 A 日本では、5年前から始まった競技です。自分が創った詩を自分の肉声で朗読、どれだけ観客をひきつけたかを競うものです。2人づつが3分間、リング上で対戦し、7人の審判員により勝敗が判定されます。ぼくは今年初参加、広島大会で優勝、全国大会でベスト4に入りました。 詩には言葉があるのが普通ですが、ぼくの表現には言葉がありません。そのため「あんなものを詩といってもよいのか?」という人もいましたが、「詩のボクシング」の場では認めていただきました。 言葉を用いない詩というのは、ぼくが発明したものではありません。これまでも、そういう伝統はあり、素晴らしい詩人もたくさんいらっしゃいます。一般には、あまり知られていませんが・・・・ <大会で、映像作家楠かつのりさんから、「寺内選手は音の構成が上手。観客はいつの間にかその声の世界に引き込まれた」と高く批評されている>
A 中学のとき、ビートルズに夢中になり、高校に入るとバンドを編成、作曲を始めました。初めはいわゆるポビュラー音楽でしたが、次第に自分の音楽を書きたくなり、ポピュラー音楽から離れていきました。そこで、音大に入り、本格的に勉強したくなったんです。 しかし、音楽大学への進学については、父は初め賛成しませんでした。音楽大学は他の分野の大学より学費が高いし、そこまでして作曲を学んでも食えないではないかと。親心としては当然だと思いましたがね。 Q ポピュラーの場合は当たれば儲かりますね。 A 売り上げの面では、クラシック音楽は、その100分の1以下でしょうね。ましてや現代音楽となると、愛好する人はごく僅かです。全然儲かりません。(笑) Q それでも、現代音楽の作曲を続けているわけは? A 好きだからというのが、第一の理由です。その他には、文化的に意義があると思っています。 現代は多様化しているといわれますが、音楽もそうです。ぼくは、この多様化というのが好きなんです。みんなが同じ方向を向いているのではなく、いろいろな好みを持っている。これは素晴らしいことだと思いますね。 ぼくが現代音楽を止めれば、ただでさえ少ないやり手がまた減ります。これは、多様化という点からみて、文化的損失ですよ。(笑) Q 最後に、今後の抱負を一言。 A 自分にしか書けない音楽を創りたい。しかし、そのためには過去や他人のものを意識しないといけません。結局、いろんな音楽を聴くことが大切なんだと思います。 <「今やっている音楽は、儲からないし、これから先、どれだけがんばれるかわかりません。だけど、やれるうちは、がんばろうと思います」と語る寺内さんだが、その柔和な笑顔の中に、並々ならぬ信念があった。こんな若者がいるから世の中が進歩するのだろうと思った> |
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