◆初めて会った白井朝香さんの印象は、これまで想像していたものと、およそかけ離れていた。
チラシの写真やステージで見た白井さんは非常にエレガントで、ちょつと近づきがたい雰囲気がある。そんなことで、少しかまえていたら、普通のOL風の女性が現われたのでびっくりした。
笑顔がやさしく可愛らしい。喫茶店の店員に話しかける言葉遣いは気さくで庶民的だった。
◆白井さんは、広島で生まれ広島で育った。ヴァイオリンを習い始めたのは6歳。ピアノをやりたかったそうだが、ピアノは大きいので、ヴァイオリンにするようよう両親から勧められた。
音楽の道に本格的に進もうと思ったのは、高校2年生のとき。英語が好きで通訳を志望していたが、通訳は生涯続けるのが難しいということで断念、音楽を選択した。その頃広島市民オーケストラに入り、「みんなで音楽を創る素晴らしさ・感動」を味わったことも、大きなきっかけとなった。
今は、フリーのヴァイオリニストとして、中国地方を中心にソロ、室内楽、オーケストラの演奏活動を続けている。
◆こうした彼女の演奏活動も、順調なときばかりではなかった。
「本格的に音楽の道に進もうと決心した高校のときまで、何度、ヴァイオリンを止めようと思ったか知れません。それでも止めなかったのは親のおかげと感謝しています。現在私がプロのヴァイオリニストとして演奏活動することができるのも、皆さんが音楽を続けることを断念する時期に止めなかったから。つくづく継続は力だと思います」
彼女は、しみじみ述懐する。
「音大を卒業してからの大きな関門は、出産のときでした。私たち演奏家はテクニックを維持しようと思ったら、練習を休むわけにはいかないのです。小さい子がいると、その練習時間の確保がたいへん。苦労しました。今でも家庭との両立が一番の課題です」
◆年間の演奏回数は50〜60回。
「本番に向けての体力作り・気力づくりには、いつも苦労します。例えば先週は4回もコンサートがありましてね。すべてのコンサートを自分なりにベストな状態に持っていくのは、結構たいへんです」
「音大を出た後、学校や教室の先生になる人は多いのですが、演奏家になる人は少ないです。演奏家には技術だけでなく、本番に強いことや、スケジュール・収入が不安定な自由業に向く性格が求められます」
「苦労の多い演奏家の道ですが、喜びも多いですよ。演奏をしているときには、根源的な自分に戻れます。聴いている人と波長が合い共感したときには、何にも代えがたい喜びを感じますね」
こんな音楽でも、1日離れて、家事や庭の草花の手入れなどをしていると、しみじみとした幸福感を感じるともいう。このあたりに、2人の「白井朝香」を感じる要因があるのかもしれない。 |
|