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「音」に命をかける
貝崎静雄さん


貝崎静雄さん
貝崎静雄さん


1948年松山市生まれ
KAISER SUUND 代表
広島市西区三篠町2−17−7 
電話&FAX 082−230−3456
kaisersound@rosenkranz-jp.com
http://www.rosenkranz-jp.com



貝崎さん
木製のスピーカー
■「ローゼンクランツというブランドのすごいオーディオショップがある」と、知人に紹介された。
 広島市横川駅から歩いて約10分。オーディオショップカイザーサウンドに着いた。店内は30uくらい。いろいろな器具の中で目についたのは、たくさんの木製のスピーカー。どの商品にも値札がついていない。お店というよりは工作所に入った感じだ。


 店主の貝崎静雄さんは、部屋の中央部分にある応接セットで待っていた。なんとなく精悍な雰囲気の人である。


■「この店を始めたのは1980年です。最初の頃は普通のオーディオ小売店でした」
「15年前、当時1200万円もした世界一高価なスピーカーを手に入れましてね。嬉しくて興奮しました。しかし、その気持ちは長く続きませんでした。感動は、お金で買えるものでないことを思い知らされましたね」


「それから本物の音をどうしたら出せるか、来る日も来る日も、夢中になって取り組みました。そうして、何年かたったとき、とうとう救急車のご厄介になりましてね」


 そのとき、貝崎さんは開眼したという。鳴るようにできているものは、鳴るようにしてやれば鳴ると。これを原点にして、世界一いい音を作り出すオーディオシヨップを目指そうと決心、1992年には、ローゼンクランツという名のブランドを誕生させた。


 ローゼンクランツとは、17世紀の作曲家ビーバーの名作で、別名「ロザリオのソナタ」とも言われる。ローゼンクランツと名づけたのは、この曲の難しい表現を完璧に鳴らしてみたいという思いからだった。

貝崎さん
ステレオセット
ステレオセット

■「いい音とは生命感の溢れる音です」と言いながら、貝崎さんが音楽を鳴らし始めた。まず最初は三橋美智也、続いてホットなジャズ。貝崎さんは、演歌・ジャズ・クラシック、音楽と名のつくものは何でも好きだそうだ。


 そのとき、「通」とおぼしきお客さんが入ってきた。
「音がよく分離されていますねえ」とつぶやく。質問すると、ドラムやピアノなど各楽器の音が分離しているため、生演奏の音に近くなっているということだった。


 貝崎さんが一辺30cmくらいの木製のスピーカーの箱を、筆者に手渡した。思ったより重量感がある。つるつるとしていて、なんとなくやさしい肌触りがした。
「ハードメイプルという堅い木で作っています。音は木の根元から上部へ、幹の中央部分から外の部分へと流れます。それを考慮して作っているんです」


「買った機器がダメだからといって買い換えるのは、時間と金のムダです。大切なのは、現在の手持ちの機器の能力を100%発揮させることですね」


 貝崎さんの説明は力強く説得力がある。
「通」のお客さんが言った。
「完成品を買うと、後の楽しみがないですね。部品をつぎからつきへと補充していくところに、楽しみがあるんです」


 貝崎さんは、ケーブルやインシュレーター、スピーカーなど各パーツをすべて手作りしている。店内で完成できないものは、完全に企画して外部に発注しているとのことだった。


■商売の基本は?と聞くと、つぎのようなことばが貝崎さんから矢継ぎ早にかえってきた。
「消費者中心主義です」
「売上が増えればいいという考え方はしていません。商品価値を認めていただいたお客様に買ってもらえればいいんです」
「独自のインシュレーターを開発したときのことでした。弁理士さんの話を聞けば聞くほどアレルギーになりましたね。マネされたらいけないので、特許をとれです。真似されてもいい、むしろ真似されるようなものを作ろうと思いました」


 ここらになると、貝崎さんの独壇場。すごいとしか、いいようがない。
「高度成長期には、メーカーのいいなりになる優等生が幅を利かせていました。ところが、今では彼らはみんな淘汰されています。いいなりにばかりなっているうちに、考える頭がなくなったんですね。今、残っているのは、ぼくらのような劣等生だけです」
「しかし、今はきつい時代ですねえ。人の3倍働いて、ようやく食えるしか儲からないのですから」
 このようにいう貝崎さんだが、東京から東北、北海道の方まで全国的にファンが急増しているという自負も伺えた。   



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