◆「薬では人間は元気になれません。病気の時には薬を飲んでよいけど、よくなったら薬はやめましょう。人間には自然に回復できる力があるんですよ」「今は、お金を儲けようという執着がなくなりました。売上より大切なものがあることに気づいたんです」 これは、ご主人とともに広島市南区段原で薬局を経営する堀京子さんの弁。薬嫌いの堀さんのお店を見回すと、漢方薬やアロマテラピー、健康食品などが整然と展示されていた。 ◆堀京子さんがこの心境に達するには、23年の歳月があった。 現在の薬局の前は、岩国市でドラッグストアを経営。売上中心主義でひたすら走り続けた。堀さんは、もともと、薬に疑問を持っていたが、オーナーの義母との関係や子供の教育費などのことがあり、立ち止まることを許されなかった。そんな堀さんの慰めになったのは、お店が繁華街の中心にあることもあって、夜になるとやってくる飲食店の住人やそのお客さまたちだった。 ![]() ◆こうした平和な生活も、バブルの崩壊とともに破綻がやってきた。安売り店の進出である。人間関係の醜い面も嫌と言うほど見た。来る日も来る日も在庫との闘い。パニック寸前の状態だった。 そんなある日、同窓会から帰ってきたご主人がつぶやいた。 「学校ではあまり目立たなかったAという男が、今日、一番輝いていた」 その翌日、堀京子さんとご主人はAさんを訪ねて岡山へ出かけた。Aさんは小高い山に立てられているOさん宅へ案内した。木のぬくもりの感じられる家には、数人の人たちが待ち受けていた。初めてというのに、バリャーはまったく感じられない。自然を愛し、人のぬくもりを愛し、感謝の毎日を送る人たち。今までの生活はいったい何だったろうと、呆然たる思いだった。
◆堀さんは目からうろこの落ちる思いがした。今のままではいけないと思った。岩国に帰ると、早速、店を整理する段取りにとりかかる。周囲の人からは、バカではないかとも言われた。 こうして、広島市段原に薬局を開店したのが、4年前。収入は岩国のときの1割程度。今までの貯蓄が目減りしていく日が続いた。それでも充実感があった。 「実れば実るほど首をたれる稲穂かな」と言う言葉が一番好きという堀さん。今日も目を輝かせながら、お客さんと応対する。 |
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