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心に残る話

黒い革ジャンの少年たち


謎の1セント硬貨 真実は細部に宿る in usa

向井万起男著


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黒い革ジャンの少年たち
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 著者は慶応大学医学部准教授。妻は日本人女性初の宇宙飛行士、向井千秋さんである。2人でアメリカ各地を旅したときのことが、実に面白く書かれていた。
 その内容は10数編にわたるが、とりわけ印象に残った「黒い革ジャンの少年たち」を要約して紹介する。

 著者は大リーグの熱狂的ファンである。
 名著「ハンク・アーロン自伝」に、偉大な黒人野球選手ハンク・アーロンが少年期に、アラバマ州モービルの黒人街にある「カーバー球場」で夢中になって野球の練習をしたことが書かれていた。それを見て「カーバー球場」へ妻と共に出かけた。

 驚いたことに、モービル旅行センターには「カーバー球場」のことを知っている者は誰一人いなかった。次に行った博物館も同じだったが、そこでアルバイトをしていた黒人青年が知っており、簡単な地図を書いてくれた。そこは黒人街トゥールミンビルだった。

 トゥールミンビルは道路が複雑で、すぐに迷い子になってしまった。車を下りて道を聞こうと思ったが、街は黒人ばかりで彼らの目は一様に2人に対して厳しかった。そこで小さな雑貨店に入ると、店主たちから冷たい視線が注がれた。彼らも「カーバー球場」のことを知らなかった。
 店を出ると数人の高校生がたむろしていたので尋ねたら、ようやく場所がわかった。

「カーバー球場」に着くと、自動車が高速で近づいてきて、乗っている黒人から脅迫めいた嫌がらせを受けた。
「カーバー球場」は、整備が最悪で殺風景だった。生命に危険を感じたので、写真を撮ると早々に退散した。

 帰ると、モービル市の新聞社3紙に質問状を送った。
「現在のハンク・アーロン球場は、カーバー球場に建てられるべきでなかったか」
 これに対して1社だけ回答がきたが、それも公表できる内容のものではなかった。

 それから何年か過ぎ再び「カーバー球場」を訪れると、球場は整備されハンク・アーロンの記念碑も新設されており、黒人の目からも厳しさが消えていた。




黒い革ジャンの
少年たち

謎の1セント硬貨 
真実は細部に宿る 
in usa


向井万起男著
講談社発行

初版発行 
2009.2.20






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