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心に残る話

ニートの問題の本質
希望のニート
二神 能基著


希望のニート


 いまさら言っても仕方ないことかも知れませんし、私1人がどうこうできる問題でもないのですが、やはり、バブルが崩壊したあと、あそこで社会を切り替えるべきだったのではないか・・・そんな思いを強く抱いています。


 終わりなき経済成長神話からいったん降りて、いまのように働く人を交換可能なパーツとして見るのではなくて、もっと人間的で一人ひとりを尊重する価値観を持った社会へと転換する必要があったと思うのです。


 せっかく、経済が破綻して最初から出直すチャンスだったにもかかわらず、私たちの社会はふたたび右肩上がりの経済成長路線を進もうとしました。その結果、「勝ち組」「負け組」といった非常に陳腐な言葉が飛び交うような貧しい社会になったのです。


 そういう貧しい視点で見れば、ニートは「負け組」です。彼ら自身も自分は落伍者だと思っています。経済至上主義の大人たちも、ニートが経済成長率を何パーセント引き下げた、なんていう尺度で語ってしまう。しかし儲けた人間が一番偉いという価値観だから、そうなるだけです。


 それは違うのだと、むしろいま、良識ある大人たちがきちんと発言すべきです。会社組織の維持のためには社会的不正さえいとわない大人たちに対するアンチテーゼを、彼ら自身は無自覚だけれど、ニートという存在をもって体現している・・・私はそう考えています。


 そこを、大人たちがきちんとプラスにとらえてやるべきです。むしろ、ニートが生きやすい、もっと人間に優しい社会にする・・・本来は、そういう観点から論じられなければならない社会問題のはずです。断じて、「ニート問題=怠惰で親に甘えた若者たち個人の問題」ではないのです。


 とはいえ、資本主義の社会ですから、深夜残業もいとわず、家族も顧みず、週末返上で働いて年収1千万円、2千万円をめざす人は、それはそれでがんばればいい。
 その一方で、残業はほとほどで切り上げ、週末もしっかり休んで、もっと自分の時間を大切にする年収300万円の暮らし方や生き方も、同じように尊重されるべきです。


 年収1千万円の人生だけが「勝ち組」として賞賛されて、年収300万円の人生が「負け組」として馬鹿にされる・・・そんな心貧しい社会に私はしたくありません。


 ニートを更正させようという視点ではなくて、まずニートの存在を認めたうえで、むしろニートが生きやすい社会へ組み替えていく。いやニートだけでなく、結婚や出産をした女性やリストラされたサラリーマンが、何の引け目もなくふたたび働きはじめられる社会こそ、少子高齢化社会のあるべき姿だと私は考えています。


 

ニートの問題の本質


希望のニート
著者 二神 能基
発行所 新潮文庫
初版 平成21年4月


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