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心に残る話
◆「告知」ならぬ「酷知」をする医者の心理◆
| 著書 |
がん患者よ、医療地獄の犠牲になるな |
| 著者 |
近藤誠 ひろさちや |
| 発行 |
日本文芸社 |
| 初版発行 |
平成17年5月 |
| 定価 |
838円 |
「告知」ならぬ「酷知」をする医者の心理
過日ある人から、「検診を受けたら精密検査になり、膵臓がんと診断された。切除しないと3ヶ月で死ぬと言われた」という相談がありました。
手術を勧められたというのですから、肝臓転移などがない、比較的早期の膵臓がんなのでしょう。わたしは次のように答えました。
「今、元気なのですから、かりに放っておいても、3ヶ月以内に亡くなることはありません。別の対処策を検討したらいかがてしょう」
死なないと言ったのは、たとえ膵臓がんであっても、現在元気な人が3ヶ月以内に死ぬはずがないからです。3ヶ月以内に死ぬのは切除手術を受けた場合です。
膵臓がんの手術成績は不良です。日本の全国統計では、手術できちんと切除できても、5年生存率は20%しかありません。そのうえ、膵臓がんの手術は合併症が多く、5%〜10%が手術のため死にます。
それで欧米では、ほとんどの膵臓がんは手術をしないほうがよいとしています。(中略)
次の日に別の人から、「膵臓がんで肝臓に転移が見つかった。抗がん剤治療をしなかったら、3ヶ月で死ぬと言われた」と相談がありました。
がんの成長速度は意外とゆっくりです。直径が倍になるのには何ヶ月もかかるので、放っておいても3ヶ月で亡くなるとは考えにくい。「亡くなる人がいるかも知れない」というのならわかりますが、余命3ヶ月と断定するのは行き過ぎです。
臓器転移がある膵臓がんを抗がん剤で治すことはできません。がんが小さくなることはあっても、副作用が全身を襲います。副作用のために寿命が縮むかもしれないのです。
それで、わたしは次のように答えました。
「すぐに死ぬことはありません。抗がん剤治療はお勧めできません。痛みは鎮痛剤や放射線でやわらげるようにしたらどうでしょうか」
このように医者があてにならないことを言う理由は2つあります。
1 医者がガンを治療せずに様子をみたデータの存在を知らず経験もない。
2 患者を不安にさせて早く自分の治療を受けさせようとしている。
これでは「告知」でなく「酷知」。患者や家族は酷知に対して自衛する必要が ある。(中略)
そこで患者・家族が心得ておくべきことをあげましょう。
1 余命を期間の幅でなく、1ヶ月とか3ヶ月と語るのは、医者が無知か、患者
を焦らせようとしているかどちらか。
2 臓器転移があっても、成長速度は普通、想像以上にゆっくりである。
3 がんは、その時点で転移があるかないかどちらか。1個のがんがそこまで成
長するには10年か20年かかっている。その時点で転移がないものは、長い
間に転移できなかったのだから、今後も転移しないはず。
4 したがって、1ヶ月や2カ月で事態は大きくは変わらない。情報を集めて、治
療法を検討する時間的余裕は十分ある。
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