理想的な死に方の病気とは何でしょう。(抜粋)
病気によって死に方は違います。どのような病気なら理想的な死に方ができるのでしょうか。
いろいろな病気がありますが、がん、心臓病、脳卒中というのが日本人の3大死亡原因になっています。その確率は、この三つの病気で3人のうち1人が亡くなるというほどです。
この中でも、がんという病気は嫌われています。一番人気は心臓病、続いて脳卒中、最後ががんとなります。
しかし、「家族に見守られて死にたい」「家族に迷惑をかけないで死にたい」「ボケずに死にたい」を理想とすると、がんは決して悪い病気とはいえません。
まず、一番人気の心臓病です。これはいいです。ウッといったときには、らくになれるわけですから。ただ、「家族に見守られて死にたい」という希望はかなえられるかどうか微妙です。なにしろ、この発作はどこで起きるかわかりません。
「家族に迷惑をかけないで死にたい」という希望もかなうかとうか微妙です。本人は一瞬で逝けるわけですから、迷惑などないと思うのですが、家族にとってはどうでしょうか。
確かに看病疲れなどはないかも知れません。しかし精神的にはどうでしょう。大切な家族や友人との間には、絆という何本もの見えない糸でしっかり結ばれています。ところがころっと死ぬということは、いっぺんにこの糸が切れてしまうわけですから、残された家族や友人は強い悲しみを抱えたまま、生きていかねばなりません。
そう考えると、理想的な死に方はお別れの言える時間が必要なのです。少し寝込む期間があると、家族は一生懸命看病し少しずつお別れすることができるのです。
そうなると、心臓病で死ぬことが理想的な死に方と呼べるものか、問題があることがわかります。
次に脳卒中ですが、これは楽に死なせてくれる病気ではありません。倒れてから発見が早いと、助かる確率が高いのです。問題は助かってからです。脳の細胞がやられているわけですから、運が悪ければ、10年以上もさまざまな介護を受けなければならなくなります。これは、「家族に迷惑をかけないで死にたい」「ボケずに死にたい」という理想的な死に方とはかけ離れることになります。
もし、脳卒中でころっと逝く場合には、家族との別れができなくなります。
最後に、嫌われもののがんです。がんには心臓病や脳卒中と違う点が一つあります。死期が予想できるということです。
普通、がんを患っても、初期のうちは元気なものです。ところが徐々にがんが全身に広がると、体調が悪くなります。そしていよいよ寝込まなければならなくなると、だいたい3ヶ月で息を引き取ることになります。この「3ヶ月」の予想が、家族とのお別れという意味で大きいのです。
がんで死ぬことのもう一つの利点は、礼節を逸することなく死ねるということです。会葬御礼のテープや文面を残して亡くなられる患者さんは少なくありません。
がんは苦しいし痛むものだという印象が、深く浸透しています。しかし、現代の医療では、痛みを止めることはそれほど難しいことではありません。
こうしてみると、がんは理想的な病気とはいえないかも知れませんが、最後まで豊かな人生を生き続けて「笑って大往生」を迎えるためには、決して悪い病気ではないことを理解していただけると思います。
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