中途視覚障害者の自立をすすめたい
 ささき治療院/佐々木健二さん


佐々木健二さん
佐々木健二さん


佐々木健二さん 57歳
ささき治療院 はり・指圧・マッサージ
Tel 082-289-7138(予約申込み)
営業時間 9:00〜19:00
定休日・・・日、月


視覚障害者の自立をすすめる会 会長
Tel 082-289-9399
E-mail s-ken006@go4.enjoy.ne.jp
URL http://www.geocities.jp/ziritsu55/


〒732-0023
広島市東区中山東3丁目2−13
ハイツOZAKI


ささき治療院の案内地図 ささき治療院の前景
4月1日移転・オープン




30歳で中途視覚障害者となった佐々木健二さんは、「ささき治療院」を経営する傍ら、「視覚障害者の自立をすすめる会」の会長として、視覚障害リハビリテーションの啓発実施と中途視覚障害者の自立支援活動に力を注いでいる。その模様を取材した。

パソコンを操作する佐々木さん
パソコンを操作する佐々木さん
電話で申し込みを受け付ける
電話で申込みを受け付ける
申込みを点字で記録
申込みを点字で記録

宝物のオーディオ
宝物のオーディオ


■当日は、ささきあん摩鍼灸治療院の定休日。佐々木健二さんが、明るく爽やかな笑顔で私を迎えてくれた。
「4月1日から新しい治療院に移転するので、今、部屋がごったがえしています」
 そんな部屋の中で、彼はまるで目が見えるかのようにスムースに移動する。「ここに段差がありますから、気をつけてください」と注意された。感心していると、「他のことを考えながら動くと、この柱に頭をぶっつけるんですよ」と笑った。
 

 電話が鳴る。お客さまからの申込みだった。通話が終わると、申込み内容を点字で記録する。まことに手馴れたものだった。なによりも驚いたのは、目の見えない佐々木さんがパソコンを自由に操作できることで、
「いただいた名刺はパソコンで読み取り、音声に変換します。ホームページも読みとることができます」と、パソコンを操作して見せてくれた。
「ホームページのテキスト部分はわかりますが、残念なことに画像や複雑な表は読み取れません。パソコンは一般のものを使っています。問題はソフトで、市場が視覚障害者に限られているため非常に高くつきます」


 ちなみに視覚障害者用の主なソフトは次のとおり。
◇画面拡大ソフト・・・画面を拡大
◇画面読み上げソフト・・・音声に転換して聞く。
◇ピンディスプレイ・・・点字で読む
◇点字プリンター・・・点字文書の打ち出し
◇音声プラウザ・・・インターネットの利用
◇ワープロソフト・・・音声案内を利用して入力


 視覚障害者は、幼いときから目が見えない先天的視覚障害者と成人してから失明した中途視覚障害者に分けられる。広島市の視覚障害者数は約3400人と言われるが、そのうち約6割が中途視覚障害者だそうだ。


「先天的視覚障害者は医学の発達により減ってきていますが、中途視覚障害者は、糖尿病、緑内障、網膜色素変性症、交通事故などのため増加の一途をたどっています。
 中途視覚障害者は大半が65歳を超える高齢者であるため、点字の習得が容易ではありません。そのため今ではパソコンに人気が集中しています」


 先天的視覚障害者と中途視覚障害者の間の意識格差は、非常に大きい。
「先天的に目が見えない人は視覚障害に馴れており、したたかに生きていく方法を身に着けています。ですから、なかなか音を上げません。
 中途視覚障害者は、今まで見えていた目が急に見えなくなるものですから、パニックに陥って何も手につかなくなります。歩行もままならないし、外からの情報もまったく入ってきません。こんな中途視覚障害者を見ると、先天的視覚障害者は何とも甘くてたよりないと感じるのだと思います」
 

 絶望の淵にあえいでいる中途視覚障害者に希望を持たせるには、リハビリテーションを通じていろいろなノウハウを身に付けさせ自立を促すしかない。こういった考え方から、「視覚障害者の自立をすすめる会」では、10年前から広島市にリハビリテーション施設の設置を陳情してきた。
「こうした長い間の努力が実り、昨年、西部新都に広島総合リハビリテーションセンターが建てられ、眼科部門も設置されました。今年の4月にオープンします。当初批判的だった先天的視覚障害者の方たちも、今ではその必要性を理解されるようになりました」と彼は胸を張る。



拡大読書機の使い方セミナー
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調理体験教室
調理体験教室


■視覚障害者の自立をすすめる会



会の目的
・視覚障害リハビリテーションの啓発
 実施
・中途視覚障害者の自立支援


会員
視覚障害者・眼科医・歩行訓練士・医
療相談員・ボランティア・視覚障害リハ
ビリに関心ある人で、約150人。


活動内容
・相談活動
・リハビリ活動として指編み教室、外出
 交流会、調理体験教室など。
・視覚障害リハビリについてのセミナー
・行政や議会への陳情
・会報誌の発行


お問い合わせ
事務局 佐々木健二
電話 082-289-9399

 続いて、自立心の大切さを訴えた。
「リハビリテーションといっても、いわゆる『おんぶにだっこ』ではいけません。福祉に依存していると、ほんとうの意味での力がつかず、なんのリハビリかということになってしまいます。
 一般に目が見えなくなると、たいていの人はその事実をかくします。恥ずかしくて外に出ようとしないのです。せっかく外に出ても、危険な目に遭うまでは白い杖を持って歩きません。
 かくしていると暗くなるだけです。目が見えないことをオープンにすると、周囲の人たちのサポートを受けやすいし気持ちも明るくなります。受障前の視覚障害者に対する偏見が強いほど、立ち直りが遅くなるという傾向があるようです」


 ささき治療院の方針について伺うと、
「患者さんは救いを求めて来られます。どこに行ってもよくならない、原因がわからない、しんどいなど、皆さんの悩みは深いんです。顔は見えませんが、声の表情でわかります。
 私が心していることは、まず自分が明るくて元気なこと。体調にはいつも気をつけています。
 患者さんに初めて会ったときは、できる限り話を聴くようにしています。それからあん摩鍼灸の治療に入ります。
 治療を続けているうちに、患者さんの表情が明るくなってくると嬉しいですね。ささきあん摩鍼灸治療院にいくと元気になるといわれると、18年間の努力が実ったと充実感が湧いてきます」と答えた。


 佐々木さんは30歳のとき、網膜剥離を病み失明した。
「目の中の中心部が見えなくなったので眼科に行ったら、その場ですぐに、障害者手帳を取れと言われました。それから1ヶ月もすると目が見えなくなりました。
 私は往生際が悪いものですから、それから5年間、10回も手術をしました。手術した直後は見えるようになりますが、すぐに見えなくなるんです。10回目の手術の後、これ以上手術すると目の力がなくなるので止めようと先生に言われ、あきらめました」


 その後はリハビリテーションと生計の確立に努力する。結婚したのは、生計の目処がおおむねたった7年前のことだった。
「結婚したとき、家内には3人の子がありました。やがて上の2人の子が独立し、今では妻と一番下の娘(高校生)、私の母と4人で暮らしています。かつては自分の子どもが欲しいと思った時期もありましたが、今では3人の子を天から授かった思っています。下の娘は小学生のときから一緒なので、格別可愛いですね。家内は自立心が強く介護の仕事をしています」


「私には宝物があるんです。このオーディオです。30年前、50万円で買いました」と笑いながら、ベートーベンを聞かせてくれた。
「ベートーベンもいいけど、佐々木さんの笑顔もいいですね」と言うと「ノー天気なんですよ。深く考えない性質(たち)なんですね」と笑った。
2008.3.26/戸村彰義

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