椿を主にした大植物園を1人で造成する
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| 武村 友和さん |

造成中の
植物園の入り口にて
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武村友和(たけむらともかず)さん
57歳
〒7231-5111
広島市佐伯区美鈴が丘東4−10−2
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広島市の郊外にある山の斜面に、人口12000人の美鈴が丘団地がある。そこを開発した業者から、宅地造成ができない切り立った山頂部分の一部を譲り受け、1人で道を作り竹薮を切つて、椿を主にした植物園を造成している人がいる。この風変わりな人は武村友和さん。彼は自分の夢を実現するため、長年務めた会社を4年余して退職、その退職金で、この大事業に挑戦している。
その様子を取材するため、美鈴が丘に住む濱本守さんと一緒に造成中の植物園を訪れた。 |
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| 左 濱本守さん 右 武村友和さん |
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| 造園中の椿園ゾーン |

切り開かれている藪林
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手作りの道路
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愛用のブルドーザー
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藪椿を背景に
左 筆者
右 武村友和さん
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椿を手に
左 濱本守さん
右 武村友和さん
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◆山林に入って驚いた。さながら台風一過の藪林といった状態で、竹や木々があちこちに切り散らされ、約2メートル幅の道路面には赤土がはみ出ていた。
武村さんが笑顔を浮かべながら説明する。
「1年半前から工事を始めたんです。最初は足の踏み場もないような状態でした。そこで、まず道路からかかりました」
この道を歩き切るのに、どのくらい時間がかかるかと聞くと、普通に歩くと10分、ゆっくり歩くと30分くらいとのこと。これだけの道路が1年半でできた秘密は、ブルドーザーや軽トラック、チェンソーなどのおかげということだが、1人で造成しているのだからすごい。
今、満開の朱色の藪椿には、1本1本、番号がつけられ接木がしてあった。彼は道端に散っている椿の花びらを踏みしめながら言った。
「ここの藪椿の数は全部で約1000本です。これらの木に、赤色や白色など、いろいろな種類の椿を接木します。その種類は現在、全部で200くらいです。そのうちに、すべての道路が色とりどりの花びらで足の踏み場がなくなるでしょう」
道端に大きなドラム缶のようなものがあるので、何かと聞くと、
「炭焼き釜ですよ。竹炭を焼きます。炭は家で使ったり山林に埋めたりして、環境を改善します」
それからしばらく歩くと、展望のきく場所にきた。鶯の鳴き声が聞こえてくる。
「このあたりに、ツリーハウスを建てる予定です。いろりもつくりたいですね」
なんとスケールの大きいことか。
裏山ゾーン |

開発が進んでいる裏山
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さくらんぼ爛漫
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いろいろな花
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しいたけが生える
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ミツバチの巣
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1人で掘り上げたという
大きな岩
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3年半かけて掘った井戸
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◆山を下りると、今度は武村邸の裏山に入った。ここは、最初の山より随分工事はがはかどっていた。
「この裏山ゾーンはプライベートゾーンにし、公開しないつもりです。他の3ケ所のゾーンは工事が完了次第、憩いの場として公開します」という話にビックリ。どのくらいの面積の山林ががあるのかと聞くと、全部を合わせると甲子園球場の5倍くらいになるという。
宅地造成が完了した開発業者が、不要になった山林を譲ろうと応募者を募ったところ、手を上げる者がいなかったそうだ。
彼は笑いながら言った。
「山林から入る収入は絶無のうえ、管理には手間と費用がかかるのですから、私のような者しか手をあげる者はいません」
少し山を登ると、おびただしい数の椿の苗が植えてあった。
「椿の種を蒔くと新種ができるんです。苗が生長すると、接木をしたり直(じか)植えをしたりします」
さくらんぼは満開。道端にはたくさんのランなどいろいろな花が植えられ、シュンラン、ミョウガ、カノコユリなどの立て札が立てられていた。
山にはどのくらい花があるのかと聞くと、はっきりしたことはわからないと前置きがあった後、次のような答えが返ってきた。
「椿が2000本、山桜100本、つつじ400本、ささゆり30本、シュンラン1000本、しゃくなげ100本、竹無数」
倒れている苔むした大木に、しいたけ1つが生えていた。
「この前までは、ものすごくたくさん生えていたんですよ。しいたけを本格的に栽培するため、今、木を伐採し準備しているところです」
しばらく歩くと、木にくくりつけてある箱があった。
「ミツバチの箱です。今年、飛んでくるのを楽しみにしています。西洋ミツバチと違い、日本ミツバチはプライドが高いので、日当たりや花の種類など、いろいろな条件を満たしてやらなければなりません。そこでミツバチがやってくるよう、今、蜜の出る木を植えているところです」
彼の構想はどこまでも大きい。次のような説明を付け加えた。
「それに、もう1つ狙っているのは蛍の出現です」
展望のきく場所にやってくると、彼は大きな石に座った。
「この石は井戸を掘っているとき出てきたものです。1人でここまで運び上げたんですよ」
井戸は自宅の庭に2ケ所あり、1ヵ所は業者に依頼して掘り、もう1ヵ所は自分の手で3年半かけて完成した。
井戸については、この他に岡山県井原市で町興しのため、毎月2回ボランティアで上総掘りをしているとのことだった。
※上総掘りとは、動力(エンジン、電気モーター)を使用せずに、人力で井戸を掘る技術。江戸時代に考案され、明治時代中頃に完成した。動力掘削が普及するまで、全国各地で行なわれていた。
どうしてそこまでやるのかと聞くと、
「自然が好きなんですよ。遊びのつもりでやっています。しかし、動物や植物などについて詳しく知らなければいけないので、目下猛勉強中です。椿園の造成については、岡山の三垣つばき園をお手本にしています」と答えた。
奥さんは聡明で優しそうな感じの人だ。
「私は主人のすることが嫌いではありません」という彼女の言葉に、彼は笑いながら言った。
「親戚はみんな反対でした。味方になってくれたのは家内だけです」
「完成するのは、まだまだ先のことでしょう。楽しみながらやります」と彼は言っていたが、完成した植物園を早くみたいものだと思った。
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| 戸村彰義 |
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